アジアン・プリンス
「ミセス・サイオンジ、邪推にもほどがあります。ミス・メイソンに謝罪してください」
ドアが開け放たれ、姿を現したのはレイだった。
彼の表情は強張り、その目には国王の母に対する怒りの感情が渦巻いている。だが、声は極めて冷静なものだった。
「わたくしは事実を申し上げたまでですわ。フサコ皇太后からいただいたバングルを渡すなんて、よほどのことがないと……」
「よほどのことではありませんか? あの……兄上に嫁いで下さると言うのです」
「陛下の新しいお妃は、わたくしがお連れしておりますわ。先の妃も日本人でしたし……あの怪我以前に面識のある方ですのよ。何度かお会いして、陛下も非常に気に入られておいででした。きっと、今度こそお子様にも恵まれて」
「いい加減にして下さい! これ以上、兄上を冒涜するなら、私にも考えがある!」
レイとチカコは正面から睨みあった。
話の内容は、ティナにはよくわからないものだ。しかし、レイの怒りは限界を超えたように全身から溢れ出ていた。
レイの本質は感情豊かで、大声で笑ったり泣いたり怒ったりする人に違いない。普段、彼は極限まで自分の感情を抑えている。昨夜の彼が素顔ではなく、あれは、ほんの一端を垣間見せたに過ぎないのだ。
ティナ自身があの事件以来、できる限り感情を抑えてきたからわかる。
きっと、彼はもっと幼いうちから……。おそらくは国のため、国民のために……。
ドアが開け放たれ、姿を現したのはレイだった。
彼の表情は強張り、その目には国王の母に対する怒りの感情が渦巻いている。だが、声は極めて冷静なものだった。
「わたくしは事実を申し上げたまでですわ。フサコ皇太后からいただいたバングルを渡すなんて、よほどのことがないと……」
「よほどのことではありませんか? あの……兄上に嫁いで下さると言うのです」
「陛下の新しいお妃は、わたくしがお連れしておりますわ。先の妃も日本人でしたし……あの怪我以前に面識のある方ですのよ。何度かお会いして、陛下も非常に気に入られておいででした。きっと、今度こそお子様にも恵まれて」
「いい加減にして下さい! これ以上、兄上を冒涜するなら、私にも考えがある!」
レイとチカコは正面から睨みあった。
話の内容は、ティナにはよくわからないものだ。しかし、レイの怒りは限界を超えたように全身から溢れ出ていた。
レイの本質は感情豊かで、大声で笑ったり泣いたり怒ったりする人に違いない。普段、彼は極限まで自分の感情を抑えている。昨夜の彼が素顔ではなく、あれは、ほんの一端を垣間見せたに過ぎないのだ。
ティナ自身があの事件以来、できる限り感情を抑えてきたからわかる。
きっと、彼はもっと幼いうちから……。おそらくは国のため、国民のために……。