アジアン・プリンス
ドアをノックする音に、一気に現実に引き戻される。ふたりは慌てて、まるでコントのような勢いで、相手から飛び退いた。


「失礼いたします。新しいお茶をお持ちいたしました」


入ってきたメイドは皇太子の姿に驚き、


「申し訳ありません。すぐに、殿下にもお茶を」

「いや、いい。下がりなさい」


メイドは深くお辞儀をすると、部屋から出て行く。
 

――ふたりの間には無言の気まずい時間が流れた。
 

沈黙を破り、口を開いたのはレイだった。


「ティナ。君に、兄上に会ってもらいたい」


静かにそう言ったのである。


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