叶わない恋。
「はっ?何言ってるの??」
夏希はベンチから立ち上がる。
『俺…お前と出会って2年も経つだろ?
なのに俺はお前の泣いたところ…見たことない。』
ゆっくりと話す俺。
夏希は俺の言葉を聞いて
「桐ちゃんが知らないだけだって。
じゃあ帰るね。」
と、言って逃げるように俺の前から姿を消していった。
夏希の声は少し上ずっていた。
俺の気のせいかもしれないけど…
きっとアイツは俺にウソをついている。
夏希は俺が知らないだけだと言った。
本当はそうじゃないはず。
陽菜もきっと夏希の涙をみたことがない。
夏希は誰にも弱みを見せない。
この中学には小学校の友達は陸しかいない。
だからアイツが小学生のころ、どういうヤツだったかは分からない。
でも少なからず今よりは心というものを、
感情を露わにしていたと思う。
夏希の本性を俺は見たい。
俺の肩に手を置いた夏希。
夏希の手はすごく温かかった。
体温というものはその人の心の温かさ。
俺はそう思う。
だから夏希の心は温かいはずなんだ。
感情豊かなはずなんだ。
でも夏希はその感情を押し殺している。
なんでそんなことをしているのかは俺には分からない。
きっと何かを抱え込んでいる。
俺がもっとちゃんと夏希と向き合っていれば…
お前はそんなに辛い思いをしなくてすんだのか?
なぁ…夏希……。
答えてくれよ……。