緑の食事風景
年が明け、春になり、桜も散った。



久し振りに電話を掛けてきた父に呼び出され、実家に帰り

通夜やら葬儀やらをぱたぱたと済ませ

母の死をよく実感出来ぬうちに、私は自分のアパートに戻った。


実家でそのようにぱたぱたとしている間、一度も泣かなかった私は、勝手に「気丈な娘さん」という事にされたり

「今はまだ心の整理が付かなくて涙も出ないでしょうから、もう少し落ち着いてから思う存分泣けばいいわよ」

等と慰められたりした。


それらの的外れな言葉も

母の死も

自分のすぐ目の前の出来事なのに、どこか遠い場所というか、夢の中で起こっているみたいだと思った。
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