寂しがりな猫背
「中央廊下に落ちてたよ」
そう言われて渡されたのは、生徒手帳。
少しだけ触れた薬指が、熱くなった。
「あ、ありがとうございます。えっと…」
名前、
「椎葉先輩」
「…なんで俺の名前知ってんの?」
「………」
「ま、いいや。落とし物には気をつけてね、今井さん」
“今井さん“
手帳を見て、名前を知られた。
一瞬だけ、目があった。
名字を呼ばれただけで、胸の辺りがむずむずする。
―――…椎葉先輩。
私は、前から先輩のこと、知ってましたよ。
いつもマイペースで、猫みたいな先輩のこと。