英国喜劇リトレイス
「何だろう?」
振り向けば、馬にのるレイモンドを見上げるエルヴィスの顔は蒼白。
……嫌な気分だ。
昔、父の老い先が芳しくないと聞いた時のように、染みがざっと広がる。
「どうしたんだよ……」
二人に近付く。
レイモンドはモノクルをいじり、苦々しくこちらを向いた。
「この先の丘に、議会の呼び掛けで集まった民衆の軍隊が待ち受けているそうです」
「な!?」
嫌な予感が的中した。
足元がスッと冷えていくのと一緒に、顔から血の気が引くのを感じた。