「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
巡礼
「暑いわねぇ、早くから」

まだ五月になったばかりだというのに、気温は三十度近くになっているであろうか、母親の由紀は娘の理絵に向かって語りかけた。

過去に地球が温暖化に向かっていた頃は、五月初旬に気温が三十度を越えるというのも珍しいことではなかったのだが、その後、人類の努力により温暖化にも歯止めが掛かり、少しずつ改善し、現在では五月初旬に三十度を越える日は、あまり見かけられなくなった。

由紀は、さきほど四国八十八ヶ所巡りの一番霊山寺を発ったところで、理絵に話し掛けたのだった。

「お兄ちゃんからの連絡がなくなって、もう三ヶ月が過ぎたね」
「勇太さん、元気だといいのにね」

しかし理絵からは何の反応も無く、彼女は、ただ、じっと前を見つめて歩いていた。
空は青く晴れ渡り、空気はまだ湿気を帯びていなかった。



同日のニューヨーク、午前零時三十分
地球連合本部では、火星入植地からの連絡を、息を凝らして待っていた。

すでに日付は替わっているのに、どうしたことなのか。
李錫重事務総長は焦っていた。

明日は地球連合安全保障会議を招集しているというのに、このままでは何の経過説明も結論も導き出せないではないか。

いったい、どうしたことになっているのか・・・
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