「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
破壊決議
午前九時、ニューヨーク

本日は小惑星群の軌道報告が午後に予定されている。

李は、ジョアンの声が聞きたくなり、受話器を取った。

ジョアンの住んでいる大阪は、夜の十時になっている。

電話を掛けると、すぐにジョアンが出たので、智行と二人は元気にしているかと訊ねた。

ジョアンは二人とも元気だと答え、智行は食事を済ませて、今はシャワーを浴びに入ったところだと答えた。

彼女は父親の李を非常に心配していた。

毎日、火星や小惑星群のニュースが流れ、少し前までは調査船などが消息不明になったニュースばかりであった。

そんなニュースを見ながら、常に父親のことが気なっていたのだった。

李は、大変ではあるけれども、体調は良いので何も心配はいらないと伝え、今は職務上、個人的に大阪まで会いに行くことは不可能だけれども、事務総長の職を退けば、一度ゆっくりと母親と二人で、大阪まで会いに行きたいものだと言った。

それまでに一度二人でこちらへ遊びに来ないかと話をしているうちに、智行がシャワーを浴び終え、出てきて、ジョアンと電話を替わった。

智行は、ここのところは仕事が忙しくて、なかなか時間が取れそうにないが、夏期休暇が、まとまって取得できれば行きますと言った。

今は京都の寺社での、傷んだ仏像の修復作業に忙しくて、毎日、帰宅するのも九時頃になるらしい。話を聞くと、どうやら昔、火災で焼かれて損傷している仏像を、最新の技術で修復しているらしい。
< 105 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop