「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
彼は、もうすぐ宇宙船搭乗の為のトレーニングに入る。
トレーニング期間は昔に比べると短縮されたが、それでも一年近くを必要とする。

そうなれば宏の時のように、なかなか家族と会えなくなるし、直の搭乗する宇宙船が、どこの発射センターになるかは、まだ決まっていないが、一度、宇宙船の発射されるところを見ておきたいと思ったのである。

三人は発射センターまでの渋滞が予想されるので、早めの朝食を取り午前七時過ぎにはホテルを出て、タクシーで向かったのだが、片側八車線もある広い道路が、途中から車でぎっしりと詰まってしまい驚いた。

普段であれば二十分もあれば着くところが、早く出たつもりであったのに一時間近くも掛かかってしまい八時頃に到着したのだった。

シャトルバスの降り口から七、八十メートル離れた所にタクシーの乗降口があり、そこでタクシーを降りた三人が建物の方向へ歩き出して、その人の数の多さに、また驚いた。

世界中から来ている、さまざまな国の人が見受けられ、その人たちの歩く流れに乗って入場口にたどり着き、並んで待っている人々の列の後ろに並んだ。

どんどん中へ入場しているのだが、なにぶん後から後から到着した人が並んでくる。入場人数よりも到着人数が多いようで、列が徐々に後ろへ伸びてゆく。

入場口は相当な数あるのだが、どこも長蛇の列である。

先ほどから周りを見ていた理絵が

「すごい数の人、それに建物も巨大、途中にあった駐車場も、すごく広かったし、宇宙船発射センターって、ものすごく広大で、びっくりだね」

と二人に話し掛けると、二人は周りを見ながら、同感であるとばかりに頷き

「本当に、すごいなぁ・・・」
と同時に答えた。

三人とも、日本の南九州にある宇宙船発射基地から発射される宇宙船は何度もテレビで見て知っている。

しかし、テレビ映像のせいかも知れないが、どう見ても、テレビで見られる日本の宇宙船発射基地が、これほどまでには巨大には見えない。
< 27 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop