佳き日に

[4]



仕事で、一ヶ月近くこの街を離れることになりました。
文化祭には行きます。
絶対に。



右下に紫陽花が描かれたメモ用紙にはそう書かれていた。
ところどころに紺色のインクが染みた丁寧な字。

裏面には雨、とだけ書かれていた。


雨がエナカの店に来なくなって三日。
学校が終わり家に帰るとこのメモ用紙が置いてあった。

別に、毎日エナカの店に来ることを雨が約束したわけでもないし、雨がこの店に来る前の生活に戻るだけだ。
だから、寂しくない。

そうは思っても、雨からのメモ用紙をカレンダーの隣に貼付けておくぐらいには、雨のことが気になっていた。

仕事って、なにしてるんだろう。
口べたではないけども、特段愛想がいいってわけでもないから、接客業ではなさそうだな。


エナカは一人古本屋でそんなことを考えて過ごしていたが、やはり心のどこかの寂しさは拭いきれなかった。


< 115 / 627 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop