佳き日に
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仕事で、一ヶ月近くこの街を離れることになりました。
文化祭には行きます。
絶対に。
右下に紫陽花が描かれたメモ用紙にはそう書かれていた。
ところどころに紺色のインクが染みた丁寧な字。
裏面には雨、とだけ書かれていた。
雨がエナカの店に来なくなって三日。
学校が終わり家に帰るとこのメモ用紙が置いてあった。
別に、毎日エナカの店に来ることを雨が約束したわけでもないし、雨がこの店に来る前の生活に戻るだけだ。
だから、寂しくない。
そうは思っても、雨からのメモ用紙をカレンダーの隣に貼付けておくぐらいには、雨のことが気になっていた。
仕事って、なにしてるんだろう。
口べたではないけども、特段愛想がいいってわけでもないから、接客業ではなさそうだな。
エナカは一人古本屋でそんなことを考えて過ごしていたが、やはり心のどこかの寂しさは拭いきれなかった。