佳き日に



類語辞典をいじっていた手を止め、桔梗がこちらを見る。

「赤い女、柳琥珀は雪たちよりも上の立場という話でしたよね?」

「でもあの女そんな感じじゃねぇぞ。」

「演技ですかね。」

「……さぁな。」

よく分からない女だ。
つまり、なかなか厄介。

鉛丹は琥珀と雪との様子を思い出す。
上下関係があるとは思えなかった。

琥珀が雪を囮に使うような力ある者には見えなかったし、ぶっちゃけて言うと年の離れた兄妹にしか見えなかった。

「とりあえず菘さんと連絡とりましょうか。」

桔梗は言うが早いが携帯電話を取り出し鉛丹に押し付けた。

「俺にかけさせんのかよ。」

「だって怒られるの目に見えてるじゃないですか。」

「オメーが勝手に休戦協定結んだんだろ!」

そう言いながらも桔梗に流されて電話をかけてしまう鉛丹。
甘いな、と我ながら思う。


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