佳き日に
「言い訳でしかないんですけど、俺、そのとき本当に参ってたんですよ。秘密警察追い出されて、内部情報知ってるからメモリーズに捕まって何か情報漏らしたらまずいことになるからって田舎に飛ばされて。村人165人ですよ。日本一少ない所で。それはまだ納得出来たんですけど、山にこもって世俗との関わりを断てとか言われたんですよ。出家かよって突っ込みたかったです。」
一気に捲し立てる白川。
「所持金も迷惑かけたってことで奪われて無一文。もう笑うしかなかったですよ。」
当時を思い出しているのだろう。
白川の瞳に影が落ちる。
「あの時の政府の誘いはまさに俺にとって救いの手というか、縋るしかなかったんです。」
すいません、と。
エナカは黙っていた。
白川に同情したとかではなく、何を言えばいいのか分からなかった。
「政府に入ってからエナカさんが改名して秘密警察をやめたって聞いてすごく驚きましたよ。あなたの監視役も俺めちゃくちゃ頑張って担当になりましたから。」
「なに、あんたその頃からストーカーだったわけ?」
「そうかもしれませんね。」
ふざけたつもりだったのに、白川は真面目に答えてきたので笑うに笑えなかった。