佳き日に
「行こう。」
迷いを振り払うように琥珀が言った。
桔梗を背負い窓の方へ歩いていく彼女を追う。
だが、うまくいかない。
頭がぐわんとして上下感覚がない。
足が地に着いているのか分からなくなる。
それでも琴が倒れることがなかったのは、後ろから鉛丹が無言で支えていてくれたからだ。
この体じゃ爆発から逃げるのは厳しいだろうな、と琴は思う。
覚悟はしていた。
琴だって馬鹿じゃない。
何が最善の策か、とっくに分かっていた。
「これ体に巻いて。」
そう言って琥珀が渡した布団を受け取ったのは鉛丹だった。
琴を手伝ってくれるらしい。
ぼんやりとした視界で、琴は鉛丹を見つめた。
これから死ぬというのに、やけに穏やかな顔をしているな、と思った。
死ぬのは怖くないのだろうか。
全てやり遂げたような顔をしていた。