佳き日に





[1]




最後に触った琴の手は、とても冷たかった。

生きている者の体温とは思えないくらい。
あの時すでに、もう限界だったのだろう。

焦点の合っていない琴の目が微笑んで、次の瞬間、心臓が持ち上げられたかのような浮遊感。

空が見えて、たくさんの布団が見えて。
そして、全身に強い衝撃が来た。

鼻が潰れるかと思った。

前も後ろも分からなかったが、琥珀は必死に走り出した。
次の瞬間、爆風により転んだが。

煤と泥と血だらけだった。

なんとか頭を持ち上げて、目に映ったもの。

それは燃えている建物だった。






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