イジワル社長と秘密の結婚
「おはようございます、課長」

いつもどおりの雰囲気で振り向いたつもりだったのに、課長にクックと笑われた。

「どうしたんだよ。朝からテンションが下がってるじゃないか」

課長に自分の想いを伝えられたからか、今は構える気持ちもなくなってる。心なしか、課長の表情も明るい。

「ちょっと寝不足なんです」


心配させないつもりで言ったのに、課長は一瞬表情を曇らせた。

「仕事の悩みなら、いつでも聞くぞ?」

「ありがとうございます。でも、今は大丈夫なので」

「それならいいんだが……」

課長は、やっぱり優しいな。春からアメリカに行ってしまうのは、寂しい気がする。

「そうだ。今日は俺が田辺さんの所へ行くんだけど、社長が渡したい資料があるみたいで、取りに行ってもらえないかな?」

「課長がですか?」

「ああ。まだ、詰め切れてない話があってね。いずれ、伊原さんに引き継ぐから」

課長に言われ、私は頷いた。担当になったといっても、まだまだ引き継げていないものもある。

蒼真さんと顔を合わせるのは複雑だけど、今は仕事と割り切って普段どおりでいよう。




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