イジワル社長と秘密の結婚
「ちょ、ちょっと、なにをするんですか?」

私は蒼真さんの胸に、顔を埋める体勢になってしまった。ほのかに香る、甘いコロンの匂い。

品のいい匂いで、寝る前につけたというよりは、染み付いた香りみたいだ……。

「何するんですか? 離してください」

「いいじゃん。俺たち、夫婦になったんだし」

「それは白紙に戻そうって、昨日話したばかりですよ?」

寝ぼけてるのかな? 困りながら、体を離そうとしても、蒼真さんの力が強い。

慌てる私とは違い、蒼真さんは淡々と言った。

「そうだけどさ。俺も男だから」

「えっ⁉︎」

すっかり、油断していたと反省する。どうして蒼真さんなら、なにもしてこないと思ってたんだろう。

「でも、私たち、お互い愛情はありません」

「ああ、そうだな。それは間違いない」

だったら、離してほしい。蒼真さんは、地位がある人だから、保身でやましいことはしてこないだろうと、思い込んだのが間違いだった。

「それなら、こんな事をしないで、離婚を考えましょうよ」




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