『短編』紙婚式
夕食を作り終え、ソファに腰かけてテレビをつけた。
無意識にこめかみを指で押さえてしまう。
ため息ばかりが漏れる。
ふと、テレビのチャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばした時。
――ガチャ。
玄関の戸が開いた。
その音に、思わず体に力が入る。
「ただいまぁ」
リビングにやってきた亮は、何事もなかったように、いつもどおりネクタイを緩め、カバンをソファの上に乗せた。
「おかえり」
平静を装うけれど、亮と目を合わす勇気がない。
「わぁ、ハンバーグだぁ。嬉しいなぁ」
わたしの気持ちなどつゆ知らず、亮は子供のように目を輝かせて喜んでいる。