オオカミ先輩の猫かぶり
「ねぇ、どうして泣いてるの?」



そう言いながら、にじり寄ってくる先輩。



私は後ずさるが、すぐ後ろは体育用具倉庫の壁。



「ちょいちょいちょいちょい。タンマタンマ。」



完全に逃げはをつしなった私は壁背を押し付けて、精一杯距離を取ろうとするが先輩はお構い無しに近づいてくる。



ちょっとなにこの急展開。



「ねぇ、アイツのせいなの?中村拓実。」



悲しそうに目を失せて、私の涙の跡を親指でなぞる。



「なんでそう思うんですか?」



まさかの触られるという事態に体を堅くして、緊張しながらも聞く。



「さっきの一部始終をたまたま見ちゃって。宇佐美さんが泣きそうな顔で走っていくから、思わず追いかけちゃった。」



「お恥ずかしいところをお見せしてしまいまして。」



見られてたのかぁ…。



しかも、泣きそうな顔だったのか…。



先輩の突拍子もない言動で一杯一杯だったから忘れかけてたけど、私失恋したんだった。



失恋するし、先輩に目撃されるしで、踏んだり蹴ったり。



そう思うと、なんだかまた泣きそう。
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