閑中八策
 日本人の感覚からすると「いや、そんな物イランだろう?」と思えるのだが、歴史的な必然があってこうなっている。
 正規軍である国軍は1979年に革命で打倒されたパーレビ王朝から引き継いだ軍隊である。
 現在のイラン・イスラム共和国体制の最高指導者であるホメイニ師は当初この国軍を解体してなくしてしまうつもりだったらしい。

 そのためにホメイニ自ら若者層に呼び掛けて革命防衛隊を結成した。
 イメージとしては中国の文化大革命で毛沢東が組織した私兵集団「紅衛兵」みたいな物だったのだろう。
 中国の紅衛兵は毛沢東の死と共に空中分解したが、あれがそのまま次代の指導者に引き継がれ、組織、武装が発展し続けたらどうなったか?
 イランの革命防衛隊はそういう歴史を持っている。

 ところが革命直後の1980年にイラクがイランに戦争をしかけ、8年におよぶイランイラク戦争が始まってしまった。
 イラン国内では革命防衛隊の大活躍でイラクを撃退した事になっているようだが、現実問題として設立から1年半程度の革命防衛隊がイラクの正規軍と互角に戦えたとは思えない。

 最前線でイラク軍と奮闘したのは国軍だったはずで、これでホメイニも国軍をなくしてしまうわけにはいかなくなった。
 かと言って、既に組織した革命防衛隊も今さらやめるわけにはいかない。この結果、二つの軍隊が併存するという珍しい状態になっているのがイランの軍隊なのである。
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