閑中八策
 古い技術が市場の状況の変化で再び脚光を浴びるケースもある。
 自動車メーカーのマツダは1970年代まではスポーツカーの雄として名を馳せた。
 その原動力は「ロータリーエンジン」という独自のエンジン技術だった。

 普通のガソリン車はエンジンの燃焼室内の爆発をピストンの上下運動に変えるが、ロータリーエンジンはそのエネルギーで水平方向に回転を生み出す。
 ロータリーエンジンはピストン式に比べて馬力が強く、だからスポーツカー向きだった。
 その代り燃費が悪いのが欠点だったが、1973年の第一次オイルショックまでは石油が世界的に安かったので、それほど気にならなかった。

 だが1970年代の二度のオイルショックで自動車の競争の決め手が燃費の良さになると、ロータリーエンジンは過去の技術になり、マツダもピストン式エンジンにシフトせざるを得なかった。

 だが、ハイブリッド車や電気自動車が次世代の有力候補になったことで、再びロータリーエンジンが可能性を秘めている事が再認識された。

 ロータリーエンジンは水平方向の回転運動なので、直接それを車軸に伝える機構が複雑になり、これが燃費が悪い最大の原因だった。
 だがハイブリッドや電気自動車の「発電用エンジン」ならどうか?とマツダの米国法人が考えたらしい。

 車軸を回すのではなく、発電専用であればロータリーエンジンは馬力が強いので燃費の悪さは解消される。
 自動車だけでなく、非常用発電機などに応用すれば従来品よりコンパクトで強力な物も出来る可能性がある。
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