暗黒と癒し姫
惜しみながら過ごす姫との時間はあまりにも速く過ぎていった。
「奏、いよいよ明日だな。」
「伊織……ほんと、あっという間だったよ。」
縁側に腰掛けながら、ただただ時間の流れに思いを馳せていた俺の側に来た男。
俺よりも3歳上なだけなのに、驚くほど大人びていて。
姫と同じ黒髪が似合っていて。
頼りがいのあるどこまでもいい男。
それがこいつ、暗黒の天使の1人伊織(イオリ)だ。
「ごめんな、こんな仕事をお前に押し付けて。」
「伊織のせいじゃない。もちろんボスのせいでもない。」
そう、これは誰のせいでもないんだ。
「………姫が呼んでる。はやくいってやれ。」
何か言いたそうな伊織がようやく発したのはそれだけだった。
