愛は満ちる月のように
悠は美月から身体を離し、ベッドの上に座り込んだ。

しばらく沈黙を守っていたが、やがて……。


「家族……親に、過大な期待をし過ぎないほうがいい」


それは喉の奥から搾り出すような声だった。

彼自身が、まるで親に期待をして裏切られたような口調だ。


「そうね……期待というか、信頼というか。でも、そうじゃない家族もいるでしょう? 無条件で信頼し合える絆を作るのには、血の繋がりも重要なのかしら?」


悠に尋ねるのは愚問だろう。

美月の目に、悠の家族こそ信頼し合って固い絆で結ばれているように映った。少なくとも、小学生の彼女が遊びに訪れていたころは。


「血の繋がりなんて意味がないと思うけどね。女が子供を産めば、男は責任を取らざるを得なくなる。親が子供に見せる顔と、それ以外の顔は別だってことだ」


その言葉に美月は身体を起こした。

バスローブの裾をはだけたまま、悠の隣に座り込む。


「それはどういう意味かしら? 私があなたを騙して責任を取らせようと思っている。そう言いたいの!?」


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