愛は満ちる月のように
しかし、彼女はその腕から逃れようと必死だ。


「構わないから、放っておいて!」

「悪かった。僕が言い過ぎた……謝るから、このまま支えさせてくれ」

「結構よ。私はひとりで歩けます。転びそうになったら、裸足になればいいだけだもの」

「……君が悪いんだ……那智さんばかり褒めるから」


本音を口にすると、美月の抵抗がなくなった。


「だって……あなたのお友だちだし……。いやだ、それじゃまるで、ヤキモチでも妬いてるみたいだわ」


美月がじっと見上げている。

その目に吸い寄せられるように、唇を重ねそうになったとき……悠の耳に、思わせぶりな咳払いが聞こえた。



「……邪魔者にはなりたくないんだけどね。でも、桜より注目されてるみたいなんだけど……」


それは申し訳なさそうな那智の声。

ハッとして周囲を見回したとき、降り注がれる何十もの視線に、さすがの悠も赤面するのだった。


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