愛は満ちる月のように
「君が花見に誘われて、こんなに喜ぶとは思わなかったよ。公共の場で飲んでる連中を軽蔑してるんだと思ってた」

「迷惑をかけるのはダメだと思うわ。でも、たしかに日本国内では、違法行為にはならないんですもの。それに、那智さんなら人の迷惑になるようなことはなさらないでしょうし……」


最後の言葉に、訳のわからない苛立ちを感じる。


「たった数回会っただけで随分信頼したものだな。ひょっとして、僕は余計なことをしたのかな? セックスも那智さんから教わりたいなら……僕からも頼んでこようか?」


心にもない言葉だ。なぜ、こんな言葉が飛び出すのか、自分でもよくわからない。

すると、繋いだ手が一気に振り解かれた。


「はっきり、おっしゃったらいいわ。昨夜は退屈だったから、他の男性のベッドで勉強してきてくれって」


美月は怒って、ひとりで歩き出そうとする。

しかし、足場の悪いその辺りは、彼女のハイヒールには似つかわしくない場所で……。途端に美月はヒールを引っ掛け、倒れそうになった。


「危ない!」


手を伸ばし、悠は美月の身体を支えた。


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