愛は満ちる月のように
「植田さんのことどうするの?」


小一時間、甘やかな時間を過ごすと美月は千絵のことを尋ねてきた。


「不倫関係にあったことを認めて、後始末をつけることで彼女の嘘に対する責任は取る。ただ、植田弁護士が不正に受け取った金は返還してもらう。……それぐらいかな」


千絵が勝手に悠との結婚を企み、沙紀の罠に落ちただけのこと。


……とは思うものの、美月に叱られたとおり、ひとりの女性と二年間も付き合うのは迂闊だった。千絵を物分りのいい遊び慣れた女性だと、思い込んでいた悠の責任もある。


「わたしと別れたら不倫じゃなくなるわ。沙紀に騙されたのは愚かかもしれないけど、彼女があなたを愛していて、結婚を望んでいるのは事実よ」

「……愛じゃないさ」

「どうして、そう思うの?」

「僕に一条の名前がなければ、千絵はここまで結婚に拘らなかっただろう。きっと僕は、一生縛られ続けるんだろうな……一条の名前と、沙紀という女に」


悠の答えに美月は身を乗り出してきた。


「じゃあ、捨てたらどう?」

「捨てる? 一条を?」

「だって、そんなに一条グループが欲しいように見えないから」 


< 274 / 356 >

この作品をシェア

pagetop