愛は満ちる月のように
「誰かいるの? いるなら返事をなさいっ!」


声を張り上げなら、ずんずん家の中に入っていく。


「美月、いったい何を考えているんだ!?」

「はっきりさせたいだけよ」

「それなら僕がやる。君は玄関で待ってるんだ!」


美月の腕を掴み外に引っ張り出そうとするが、


「……リビングに……誰かいるわ」


言うなり、彼女は悠の手を振り払う。


「え? あ、いや、待て」


彼女の言葉に気を取られ、リビングに視線を向けた瞬間、美月は悠の傍から離れた。


つかつかと廊下を進み、美月はリビングのドアを開け放った。


「お帰りなさい。ふたりとも遅かったのねぇ」


リビングには煌々と電気が灯っていた。

その中央に置かれたソファの上、沙紀は座っている。まるで我が家のように寛いだ格好で、ふたりの顔を見るなり、さも愉快そうに笑った。


「何を……している? なぜ、貴様が部屋にいるんだ!?」


< 279 / 356 >

この作品をシェア

pagetop