愛は満ちる月のように

(7)侵入者―2

美月を押し退けリビングに足を踏み入れた。

悠は訳がわからないまま、沙紀に詰め寄ろうとする。


「あら、お言葉ねぇ。この間来たときにフロントの方に引き止められたのよ。姉って言っても信用してもらえないし……。だから、あなたに確認しておいて欲しいってお願いしたの。そうしたら……」

日付を言われてようやく思い出す。

それは美月を初めて抱いた日のことだった。セックスは那智に教わると電話を受け、半ばパニックで美月に思い留まらせようとした。マンションに戻ったとき、フロントに呼び止められたが……『わかっている』と答えて内容は確認しなかった。

「びっくりしたわぁ。今日訪ねて来たら、はい伺っております、なんて言われるんですもの。あなたもようやく私のことを認めてくれたってことかしら」


あのときは色々焦っていたから……というのは言い訳だろう。

付け入られる隙を作ったのは悠自身だ。千絵のことといい、いいように振り回されている自分が情けなくてならない。


「出て行け。ここは貴様の家じゃない」


できる限り感情を殺して訴える。

だが沙紀は鼻で笑いながら、


「力尽くで追い出してみたら?」


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