愛は満ちる月のように

(8)あなたのためについた嘘

美月はクッと顔を上げ、


「ええ、そうでしょう? 気にしないで、本当のことだから」

「まさか……君が、本当にこんな真似をするなんて……」


悠は眉を顰め、首を振って大きなため息をついた。

知られたら責められることは覚悟の上だ。だが、ここまで残念そうにため息をつかれては、美月もムッとしてしまう。


「お話はそれだけかしら? そんなことのためにこんな遠くまで……」

「離婚の時期は任せると言ったのは君じゃないか? それを……こんなに早く精子バンクを利用するなんて」


(……え?)


「そこの通路を案内されてやって来たんだ。窓から、精子バンクの件がどうとか……聞こえてきてビックリした。その準備をしているのかと思って……でも、違ったんだな」

「えっと……」


もう五ヶ月目に入っている、と言えば伝わるだろうか?

だが、この調子なら……『日本に来たときにはもう妊娠していたのか!?』と言われそうな気がする。

そもそもボストンに戻って計画を即行しても、お腹が目立つほど大きくなるのは秋になるだろう。

男性というのは総じてこんなものなのかもしれない。


だが……。


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