愛は満ちる月のように
(慌ててピルの残りを計算したら……どこかで二日も飛ばしてたなんて……。悠さんにあれだけ偉そうに言ったくせに、言える訳ないじゃない)


毎日飲んだつもりだった。

最初の夜か、お城のお花見に行った日か……それとも、悠の興味を失ったことが気にかかっていたころか。

どちらにしても自分は悠を騙したことになる。



――もし君を妊娠させたら……最悪だな。

――君や子供のことを愛しているフリができるかどうか、自信がない。



あれが悠の本心とは思いたくない。だが父親との不仲や沙紀の件があって、悠は子供を持つことに怯えていた。

だが悠のことだ。

戸惑いながらも美月との結婚を継続したいと言い始めるに決まっている。


悠はハーバードのビジネススクールを卒業して六年、一度もボストンには姿を現さなかった。このままずっとやって来ない可能性も高い。

子供には可哀想だけど、アメリカの国籍だけを取るなら……悠に知られずに育てることは可能ではないだろうか?


そんな仄かな期待が美月の胸に浮かび……。


どちらにしても“産まない”という選択肢は美月の中にはなかった。


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