愛は満ちる月のように
弟の小太郎は目の前で父が撃たれ、血を浴びたことから赤いものを見るだけで怯えるようになった。入院中の父と、通学が困難になった弟の面倒まで看ている継母に、桐生の人間は美月を手放すように迫り……。

継母の苦悩を目の当たりにし、美月は自らの判断で藤原グループの総帥を頼った。

そして、日本から姿を消したのだ。桐生の力は大きいが、本来の権力を行使するためには相続人である美月の名前がいる。彼らは美月の行方を見失い、家族に監視をつけることしかできなくなった。



悠にすれば、もっと早く藤原家の力を借りていればよかったのではないか、と思う。だが、


『藤原グループも金融部門の倒産と独立、合併が相次いで大変な時期だったと思うわ。それに……本家にお嬢さんが生まれたばかりで、色々な件が重なって脅迫状がたくさん届いていたみたい。私自身、藤原本家の人間と思われて、誘拐に巻き込まれたこともあるもの。そんな中、表立って桐生まで敵に回すのは苦しかったんじゃないかしら』


美月は、最終的には手を貸してくれた藤原の総帥に感謝している、と言った。  

今、彼女がホームステイしている一家もフジワラ・ニューヨーク本社の関係者だそうだ。そして、悠が感じた不審な男たちも、実はボディガードというから驚いた。


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