愛は満ちる月のように
胸の中に七年前の美月がいた。

守ってやりたい、と思った二ヶ月後、悠は彼女と入籍した。どうしても、彼女をあれ以上傷つけたくなかったからだ。その結果、自分の身に危険が及んだとしても。

悠と美月の結婚は、一部の人間にのみ知らされた事実。世間一般ではほとんど知られていない。それはふたりが望んだことだった。


「一条……お前」

「いや、違う。そうじゃない! そんなことは絶対に……」

「落ちつけよ。話し合うより、自分の中で整理するほうが先だな」


悠は那智から手を放し、息を吐いた。


「違うと言ってる。なんの問題もないんだ。きっちり整理はついてる。ただ……彼女の立場は複雑で、色々危険な目にも遭ってきた。僕は、保護者のようなものなんだよ」


そこまで聞いて、那智は口を挟む。


「じゃあ、尚更ひとりはまずいんじゃないか?」


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