愛は満ちる月のように
「本部長?」

「気を遣わせて済まないね。コレは……はしゃぎ過ぎた結果だから、そんなに心配してくれなくてもいいよ」


悠は思わせぶりに答える。

すると、秘書の川口は途端にニコニコし始めた。


「まあ、そういうことですのね。じゃあ、これからずっと奥様はこちらに?」

「……え?」

「この際ですから言わせていただきますけど。何かご事情があってこんな地方都市に来られたんでしょうが、だからと言ってヤケクソのように女性遊びをされるのは感心しませんね」


きっと女で失敗して飛ばされてきたのだろう。そんな夫に呆れ果て、妻はついて来なかった。あるいは、政略結婚で押し付けられた妻から逃げてきたか……。

本部長の“謎に包まれた結婚指輪”の真相をめぐってそこまで噂されていたとは、悠も驚きだ。


「とにかく、あんなにお綺麗な奥様がいらして、ここまで来てくださったんですから……。もう、来る者は拒まずみたいな女性に手を出すのはやめてくださいね。別れ話のたびに、『本部長は会議中です』と言わされるのはごめんです」


美月は悠と暮らすために来たわけではない。

ふたりが離婚間近だとは、とても口にできない悠だった。


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