愛は満ちる月のように
午後二時、今日は珍しく社内の食堂で昼食を取った。

遅い時間だったせいかとくに社員たちと顔を合わせることもなく……。


悠の仕事は、やろうとすれば際限なくあり、手を抜こうとすればいくらでも抜ける。

数年前まで、このO市に西日本統括本部は置かれていなかった。というより、一条グループ自体が東日本にしか統括本部を置いていなかったためである。西日本は各支社がその代わりを務め、担当者が直接本社とやり取りをしていた。

西日本統括本部長の役は悠でふたり目だ。

O市は地元の活性化を目論見、一条グループの資本投下を期待している。

前任者はそんな地元企業に対して思わせぶりな態度に終始し、あらゆる決断を先送りにしてきた。悠と入れ替わるように本社に戻ったが、おそらく地方に流された、という意識が強かったのだろう。

その後任である悠は、比較的早くに地元の優良企業と手を結んだ。現在は主に物流の拠点としてO市を利用し、不動産部門にも力を入れている。


(まあ……左遷じゃないが、出世とは言い難いよな)


悠の場合は取締役に昇進したため、出世と思われいてる節はある。

だが、それならなぜ、経験も少ないうちに本社から離れているのか、と誰もが疑問に思うだろう。


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