もっと…

天使の裏の顔に御用心

「梓……」



“川瀬さん”と呼んでいたのに、急に優しく下の名前で呼ばれ、思わず顔を上げた。


新妻先生の瞳…凄く綺麗。黒ぶち眼鏡の奥に見える切れ長の目。よく見ると茶色だ。



梓はその瞳に吸い込まれていた。



「…何?俺の顔まじまじと見つめて。もしかして惚れた?」



「ちっ、違います!!てか、早くリボン返して下さい!!」



「ふ~ん。ま、いいや。とりあえず今日から暫く数学教えてやるから。放課後、ちゃんとココに来るんだぞ」



「はぁ…。…それって個人授業…?」



「そうだな…(黒笑」



ゾク…ッ!!


なんか、新妻先生の笑顔が怖い…。授業中とかはそう思わなかったけど、天使の中に悪魔が居るって感じ…。


考えてた感じと全然違う!!もっと優しい人なのかと思ったけど……いや、本当は優しいのかも。こうして個人授業してくれるし。リボン返してくれたし。


だけど……



「ちょっ…何してんですかぁ!!」



梓は新妻先生の胸を押す。



「何ってキス……」



“キス"という言葉に真っ赤になる梓。



私、そういう免疫ないんだからぁ…っ。

いままで男の子と付き合うどころか、喋った事すらあまりない…。



それくらい、男に疎い…。



「可愛いーな……」



「へ…?」



今、何て…?声が小さくて聞き取れなかった。

新妻先生は梓の頭をポンッと撫で、「何でもねーよ」と言った。




「さて、今日はこれでおしまい!どうだ?ちゃんと理解出来たか?」



「はい。凄く分かりやすかったです♪流石先生ですね^^」



「………」



「先生…?」



「っあ!あぁ…」



ん…?なんか先生の様子が変…。


顔紅いし……あっ!!まさか…



「先生大丈夫?顔紅いですよ?熱があるんじゃ…」



先生のおでこに触れようとすると、振り払われてしまった。



「いやさ…。ただ、梓は笑ってた方が可愛いなと思ってさ」



「っ…///」



先生…何言ってるの!?照れるからやめてよ…っ。


梓は先生から視線を逃れようと窓の外を見ると、空はすっかり暗くなっていた。



「先生、私もう帰ります」



「あっ。送ってく!」



「大丈夫です。母さんに電話するので」


軽く会釈をし、準備室を出た。

なんか…新妻先生だと普通に喋れるな。クラスの男子だと緊張して喋られない。


新妻先生は違った。少し怖いけど…。
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