冬の香り
少しピンク寄りの茶髪で、前髪は長すぎず短すぎず、サイドはシャギーを入れてある、胸の辺りまでの長さの髪の毛。

顔は幼い顔つきをしていて、中学生…と言ってもバレない予感がする。

それに加え、いつもヘラヘラしているが皆に優しく、笑顔が絶えない性格をしている紗枝は、

その誰にでも対等に接する性格が災いして、彼女を嫌っている人間も多かった。

偽善、いつもヘラヘラしてる、馬鹿っぽい―

そんな言葉を聞こえるように投げかけられたりもしていた。

自分で言うのもなんだけど、世渡りの上手い、適度に人に物事を合わせながら人生を生きているアタシから見ると、紗枝はとても損な役割をしているように見えた。

どうして紗枝はもっと上手く生きられないのだろうか。あまりにも不器用すぎる。

自分に素直に生きると損をするじゃない。

この世は人を利用して上手く橋を渡っていく人間が得をするように出来ているのに。

そんなことを考えながら、アタシはパジャマを脱ぎ捨て、選んだ洋服に着替える。

メイクボックスから化粧品を引っ張り出し、

ファンデーション、アイブロウ、アイカラー、アイライン、マスカラ、グロスにチーク…


自分でも驚くほどの変身を遂げる。

あぁ、詐欺師だなぁ、アタシ。

メイクが終わり、お気に入りのスタイリング剤で髪の毛を整えた後鏡をチェックすると、そこに写し出された姿は我ながらとても完璧で、惚れ惚れするくらいだった。


「おぉいいじゃん。香緒ちゃん見た目は凄く美人さんなんだから、そのキツ～い性格を見直してちょっと素直になってさ、もっとこう…」


―余計なお世話だった。
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