メルラバ
「あの…これをお返ししようと思って」

差し出されたのは、あの時、私が貸してあげたハンカチ。

返さなくていいと言ったのに、それはちゃんと洗濯されていて、きれいにアイロンがかけてあった。

思わず頬が緩む。

「ありがとう。わざわざ良かったのに」

私の言葉に彼女は「いいえ」と首を振って、思いきったように顔をあげた。


「あのっ、雑誌読みました。あ、私、井上ありさっていいます。あの…負けないで下さい!」


ありさと名乗った彼女の白い頬が紅潮する。
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