ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





警戒心のない白い背中。
一糸纏わぬ菜々美のそれを見て、理性が保てるわけもなかろうに。
…いや、万一風呂場で倒れられたらまずいと思ったからこその監視のつもりだったのだが。


そんなことを考えているうちに目的の部屋の前を通過しそうになった我は、慌てながらも静かにふすまを開けるのだった。






「………入るぞ」


そうは言ってみたものの、当の本人はまだ夢の中らしく返事がない。
すやすやと眠る姿に安心した我は、そっと彼女のそばに腰を下ろし顔をのぞき込む。


薄く開いた唇の隙間から漏れる吐息に、我はひどく煽られているような気分になった。





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