ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「…早よう、目覚めぬか」
菜々美の唇に指を伸ばし、その柔らかさを確かめるようになぞる。
するとくすぐったかったのか声にならない声をあげて抵抗してきた。
(誠、愛い)
「………ぬしは」
我をどれほど溺れさせれば気が済むのか。
得体の知れない我を拾い上げ、無償で世話をし。
あまつさえ、我の瞳を綺麗だと言い切った。
その言葉に、仕草一つに我がどれほど救われていたかこの女は知らぬのだ。
「…愛しい」
そうつぶやくと、吸い寄せられるように我は唇を重ねた。