ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
想は結ぶ





出店の一角からそう叫ぶ声に、私の足が止まった。
祭りを楽しんでいた周りの人々もその声に反応し、続いて愁の姿を捉えて事の流れを見つめようとしている。


それに乗じた声の主は、語気を強めて畳みかけてきた。



「しかも愁様は人間の女なんかにうつつを抜かしているときた!そんな方がこの里をまとめていけるのか?はなはだ疑問であるなぁ、…そうだろう皆の衆!」


その言葉に、祭りの空気は一変して凍り付いてしまう。
騒ぎ立てる一団の嫌な笑い声だけが辺りを包んで、子供たちなんかは今にも泣き出してしまいそう。


(………なんなのこいつら!)


そう思った私は愁の手を離してそいつらのもとに歩を進めた。
そして、一団のリーダー格らしき男の目の前に立つと思いっきり振りかぶる。





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