ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
涙で霞む視界。
その先に、あんなにも会いたかった愁がいた。
「―――菜々美!」
「動くな。少しでも動けばこの女を殺してやる」
今までに聞いたことのない怒りを含んだ愁の声に被せるようにそう告げた梗の手が私の喉元にかけられる。
爪が食い込んで皮膚が破ける感覚に、私は思わずうめいた。
「いかに他と異なる瞳を持つ兄様であっても今の僕は止められませんよ」
「………魂の術は禁忌だと、ぬしは知っておりながら行ったのだな。ならば我は頭領の命によりぬしを討伐する」
梗の肩越しに見えたのは、日本刀の鞘を抜いて梗に突きつける愁の姿。
仄かな灯りを受けて光る刃先の鋭さだけが目に付いた。