ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





叫びたかった。
でも、声が出ない。


ぶつかり合った刀の音。
飛び散る火花。
二人の周りを包む、悲しすぎるくらいの殺気。




(―――止められない)


ここで通用するのは私の知ってるルールじゃない。そう悟った私には、もう何もできない。
ただ呆然と行く末を見つめることしか、できなかった。






―――キィン、キィン!


あれからずっと私の目の前で繰り広げられている剣舞。


舞うような動きだけど、これは間違いなく殺し合い。
その迫力と殺気が、私の思考回路を麻痺させていった。





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