ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
そう言って目の前で首をかき切って、死んだ――…
大して広くもない部屋に響くその一言に、私の視界が揺らぐ。
こみ上げる気持ち悪さに口元を覆う余裕もなく、身体を強ばらせて何とかこらえて。
そんな私を見て、梗は狂ったように笑い出した。
「………僕には母しかしなかった!父の顔も、兄の存在も知らずに育ち、母の死と同時に知らされたんだ!…だから母の心臓を喰らって、母の願いを叶えるためだけに僕は息をしているんだよ」
「―――たとえ…どのような理由があったとしても、ぬしが犯した罪は覆らぬ。覚悟せよ、我が弟」
冷ややかに告げる愁の声をゴング代わりに、二人は互いに刃を向けた。
(待って、…待ってよ!)