クロス†ハーツ
「1年C組の方、手を挙げてもらえますか?」
風見くんの声が、教室に響き渡った。
教室は嫌というほど静かで。
同学年の子は、私がC組だと知っているのか、少し視線を感じる。
「…はい、私です」
控えめに手を挙げた。
不意打ち過ぎて、バックレるとか、考えが全く浮かばなかった。
私が手を挙げると、すぐに水瀬が私の席に近づいてきた。
「君が、1年C組の子?」
「…はい」
間近で見る風紀委員長は、笑っているはずなのに、なぜだか怖かった。
「…嫌がって、風紀委員候補になる人なんて、初めて見た」
「え、なんで…?」
「僕、君の隣のクラスだから。…聞こえたよ、君が風紀委員候補を押し付けられてる時」
「…っ!」
なんだか責められているような感じがした。
委員長の視線が痛い。
「あえて、なりたくてしょうがない子じゃなくて、嫌がってる子を入れてみるのも、悪くないよね?」
頭が何かで殴られたように、真っ白になった。
一瞬で悟った。
どうして、水瀬薫が私の目の前にいるのか。
「風紀委員会計、決定ね」
こうして、私は風紀委員会計という重役を担うこととなった。
ほとんど、水瀬の気まぐれなサディスト精神が原因である。