女王様のため息

「は?」

穏やかにそう告げている研修部の部長を見つめて、隣でにやりとしている専務にも疑問の視線を投げた。

「研修部に異動……ですか?そんな話、聞いてませんけど」

戸惑いながら聞くと、

「ああ、総務部の部長には言ってるんだけど、まだ真珠さんには言わないように伝えてるんだ。俺たちから言おうって考えてたからね」

「はあ……」

突然告げられた異動の話。

女性が異動してキャリアを積んでいくことは、わが社では珍しい事でもないし、いつかは私にもそんな話がくるのかと覚悟はしていたけれど。

「突然ですね……」

あと数年は現状のまま総務部勤務だと思っていたのに。

本当に突然の話だった。

「真珠さんを欲しがってる部署って結構あるんだよね。だから先手を打って研修部がかっさらおうって決めたんだよ」

「決めたんだよって、そんな子供みたいに……あ、子供って、すみません」

「いや、それはいいんだけどね。で、6月の株主総会が終わって、業務が落ち着いてからの異動になるんだけど、異動先がちょっとね」

部長が、何か含みのある声音で私に視線を向けた。

「え?異動先って研修部ですよね」

確か、そう聞いたんだけどな。

専務だって、研修部の統括部門のトップだし。

だから、今二人がこうして私に異動の話をするのも自然に思えるのに。

あれ?






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