女王様のため息
こんなに自分の気持ちを露わに見せてくれる司に、私は驚きを通り越して硬直という表現が近いくらいに身動き一つできなくなってしまった。

ここが公の場でなければ、固まった体のまま司に倒れこんでいるのかもしれないけれど、そんなことはできない。

ぐっと我慢して。

「本当に、司、だよね?」

司の膝の上に手を突いて、体を寄せた。

覗き込んだ司の瞳には、嬉しそうに笑う私の顔が揺れている。

私しか見ていないのがわかりすぎるくらいのその瞳は、どこにも迷いは感じられなくて、単なる言葉だけの気持ちではなく、司の体中からにじみ出る感情が言葉となって私に伝えられたとわかる。

初めて見せられた司の一面。

目の前の男が本当に司本人なのか、疑ってしまうくらいの言葉ばかりを落としてくる、そんな一面。

全く揺れない、頑なな瞳からは、今見せられている司が、本来の姿なのかもしれないと、ふと思った。

もしかしたら、ずっと、我慢してた?

声に出さず、心だけで折り合いをつけていた?

「私を、司のものにしてくれるの?」

「もちろん。それに、気持ちのうえでは、ずっと俺のものだったからな。
今更って気もするけど」

「じゃ、司も、私のもの?」

「……とーぜん」

司の膝の上にある私の手は、そっと司に包まれて。

司が抱えていた、そして、どうしようもなく積もった、彼自身の私への甘い愛情を注がれるようで。

その熱に私の体は震えるしかなかった。

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