女王様のため息
ずっと気持ちを抑えてきたのは私なのに、これからどうするのかを決めるのも私なんて、切ないにもほどがある。

「司……私、どうすれば……」

荒い息遣いのまま、どうにか司の唇と距離を作って、声にならない声でそう聞くのも必死の事で。

「だって、司には……彼女が……」

そんな言いたくもない事実を口にするのがどれほど大変な事なのか、司はわかっているのか、ううん、きっとわかっていない。

そうでなきゃ、今こうして唇を重ねるなんてこと、するわけない。

司は、私の言葉に顔をしかめて大きくため息を吐いた。

そして、何かを諦めるように目を閉じると、そのまま体を運転席に戻した。

勢いよく運転席にもたれた司は、右腕で目を覆って、呼吸が落ち着くようにしばらく何も言わなかった。

司の体温が私から離れて、一気に私の心も体も不安定で冷たくなっていくようで、今の一瞬に近い出来事が嘘のように思える。

そして私の願望が幻想となって目の前に現れたような、そんな感じがする。

司を好きだという、諦めなければならない気持ちが、私の目の前に錯覚を起こしたような、浮遊感が襲ってくる。

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