流れゆくもの
何かが藤野の中で引っかかっている。

さっきの興味の無い話の中で、何か共感する部分があったような気がする。


共感ではなく、同調か…


そこから何か、思考が広がりそうな予感がする。
思考を広げてみれば、何かをつかめそうな気もする。



が結局、藤野は、逃げようとする思考をそれ以上追う事はしなかった。


─考えなければいけない事は他に山程あるのだから。

─逃げた思考は、必要な時がくればまた戻ってくるだろう。

そう自分に言い訳して深く追及する事を止める。



藤野はテーブルの上を綺麗に片付け、椅子を整え、盆と書類を抱えて会議室の電気を消す。



ドアを閉める刹那、部屋の中にフワフワと浮かぶ何かを感じた気がしたが、さっきと同じ言い訳をして、ドアと一緒に完全に思考を閉じた。




─宙に浮かんだままの思考は

ゆるゆると

何処へともなく

流れて─













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