桜空あかねの裏事情

ジョエルがサングラスを用いるようになったのは、彼が異能が発現してから年月を重ねていくにつれて、次第に太陽が異様に眩しく重く頭痛を伴い、ついには倒れるようになったのが始まりのような気がする。
それは異能が体に影響を及ぼし体質が変化していた時期で、非常に不安定でもあった。
安定した現在はサングラスなしで日中を歩くことが出来るが、体には相当の負担がかかる。
ジョエルにとってサングラスは、もはや生きていく上で必需品なのである。


「日中で外せと言うことは、遠回しに私に死ねと言っているのと同義だ」

「それは大袈裟過ぎるような気がするけど……」

「私は闇だからな。光に焦がれても、受け入れる事など出来はしないさ」


そう吐き捨てると、ジョエルはサングラスを掛け直す 。
まるで雲に隠れた月のように、見えなくなった素顔を残念に思いながらも、アーネストはメニューを手に取り、視線をそちらに移す。


「一段落ついたし、何か頼もうか」

「オリジナルブレンド」

「分かってるよ。私はハニーミルクにしようか……ああ、すみません」

「はい!ただいま!」


アーネストが厨房の方へ声を掛けると、明るい溌剌とした少年の声が聞こえる。
それから間も置かず、少年が小走りでこちらに向かってきた。


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