桜空あかねの裏事情

「――え」


あかねは唖然としながら昶を見上げる。


「……本当に?」


疑ってはないにしろ、あかねにとっては信じがたい言葉で、確かめるように尋ねる。


「ああ」

「ジョエルに唆されたからとかじゃなくて?」


そう聞けば、隣からジョエルの強い視線を痛いほど感じた。
しかし気にすることなく再度、昶に確かめる。


「違う……っても、周りの言葉も多少はあるけどな。でも最終的にはオレ自身が自分で考えて決めた事だ」


はっきりと面と向かって言ってのける昶に、思わずにやけそうになる顔をなんとか抑える。
と言うのも、あかねは昶がオルディネに入ってくれる事を密かに望んでいた。
だが当初は本人にその意志が無かったのと、あかね自身強制する事はしたくなかった為、今まで誘うことさえしなかった。
しかし今の彼にはその意志がある。
あかねにとってこの上ない事であるのは確かだ。
だがそれは果たして、昶自身の為になるのだろうか。


「……やっぱりオレじゃあ、あかねの力になれないか?」


なかなか答えないあかねに、僅かながら不安を感じたのだろう。
昶が眉を下げてそう尋ねる。


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