桜空あかねの裏事情
あかねは慌てて強く首を振る。
「違うよ!私ね、出来たら昶に入って欲しいなってずっと思ってたの。だから、その……すごく、嬉しくて」
ただ真っ直ぐに、今の気持ちを隠さず伝える。
「でもそれって、私の事を少なからず思って決めたことでしょ。昶の為になるのか分からなくて」
また自分の心に蓋をして、他者の合わせているのではないかと。
そんな事を思いながら、昶の言葉を待っていると頭上から鈍い音と衝撃が走る。
「いだっ!」
痛みが全身に走ると、頭を両手で抱えるあかね。
自分が叩かれたと瞬時に理解出来たが、あまりの痛さに涙目になり反論すら出来ない。
そんな様子に構わず、昶が喋り始める。
「んな事考えねーでいいっての!少なくともオレはそれが良いと思ってんだから、それで充分だろ?」
「っ……いや、まぁ……そう、だけど」
頭をさすりながら答えると、昶は優しい表情へと変わる。
「ったく、オレのダチは。変なとこで気使うよな。オレもそうだけど、もうちょい自分の事を考えてもいいんじゃね?」
「うーん…」
否定こそしなかったが、あかねはどことなく微妙で複雑な心地であった。
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